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千葉地方裁判所 昭和57年(ワ)1080号 判決

原告

千葉立之システム株式会社

代表者

寺澤一良

訴訟代理人

山本剛嗣

被告

山本一郎

主文

一  原告の訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

理由

原告の請求の趣旨及び請求の原因は、次のとおりである。

一請求の趣旨

1  被告は原告に対し金一三一万円及びこれに対する昭和五七年一〇月一〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言を求める。

二請求の原因

1  被告は、昭和五六年七月八日原告の会社に就職し、同年一二月二五日原告の会社を退職した。

2  被告は、昭和五七年六月二五日、原告の本店事務所から原告に無断で東芝ビジネスコンピューターBP―一〇〇型一台(時価一三一万円相当)を搬出し、これを窃取して、原告に対し一三一万円の損害を与えた。

3  そこで、原告は、被告に対し、損害金一三一万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日の昭和五七年一〇月一〇日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

しかし、被告には訴訟能力の欠缺が認められたので、当裁判所は、原告に対し、昭和五九年九月二一日付け補正命令をもつて、命令送達の日の翌日から二箇月以内に被告の訴訟能力について補正することを命令し、その補正命令は同年九月二五日原告に対し送達されたところ、原告は、その期間を経過した現在に至つても、被告の訴訟能力について補正をしない。

そこで、民事訴訟法二〇二条の規定に準じ、口頭弁論を経ないで原告の訴えを却下することとし、訴訟費用の負担について同法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(加藤一隆)

〈参考〉

補正命令

原告 千葉立之システム株式会社

代表者 寺澤一良

訴訟代理人 山本剛嗣

被告 山本一郎

右当事者間の頭書事件について、当裁判所は次のとおり命令する。

主文

原告は、本命令送達の日の翌日から二箇月以内に、被告の訴訟能力について、補正せよ。

理由

記録によれば、次の事実を認めることができる。

一 原告は、昭和五七年一〇月五日本件訴訟を提起した。

二 本件訴状の副本は、同年一〇月九日○○県○○郡○○町大字○○字○○三番地訴外山本太郎方において、被告の父太郎に交付された。

三 被告は、そのころ父太郎方に同居していたが、同年一〇月二六日躁うつ病、炎で○○県立○○総合病院に入院した。

被告は、入院当時気分高揚、抑制欠如、誇大妄想、不眠、不穏などの躁状態にあり、引き続き閉鎖病棟において入院治療を受けてきたものの、現在では脳の働きが低下して、性格にも変化が見られ、裁判所において責任ある行為をすることは、著しく困難な状況にある。

したがつて、右の事実によれば、被告は、現在訴訟能力を欠いているものと認めるのが相当であるから、当裁判所は、民事訴訟法五三条本文の規定に基づいて、原告に対し、本命令送達の日の翌日から二箇月以内に、被告の訴訟能力について補正することを命ずることとし、主文のとおり命令する。

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